離婚じゃない 卒婚という選択の巻 第13話







【13話の解説】
夫は圭子さんから「卒婚」の話を初めて聞いたとき、眉をひそめて困惑した様子を見せました。
「卒婚?!またお前は訳の分からないことを言って!」
と、冷ややかな笑みを浮かべ、小馬鹿にした口調で言い放ちました。 最初のうちは、まともに話を聞こうともしませんでした。
しかし、圭子さんは決して諦めることなく、何度も夫に向き合いました。
卒婚のメリット・デメリットだけでなく、仮に離婚した場合のメリット・デメリットについても根気強く説明を続けました。 圭子さんの中では、この選択が自分たち夫婦にとってベストな選択肢であるという確信が揺るがなかったのです。
しかし、話し合いを始めた当初は、夫が全く理解を示さず、むしろ圭子さんを
否定するような言葉ばかりが返ってきました。
そのため圭子さんの心には「どうしてわかってくれないの!」という怒りの感情が渦巻いていたのです。
そんな時、なおちゃんからのアドバイスがありました。
「こちらがファイティングポーズで臨むと、お相手も負けるものか、言い返して
やるという態度になります。そうなると話し合いになりませんよ。」
この言葉を胸に刻み、圭子さんは自分の希望を叶えるため、冷静さを保つことを
心がけました。夫の態度にイラっとしても、感情的にならないよう自分に言い
聞かせ、話し合いを進めていったのです。
それでも時には夫の態度に我慢できず、つい言い返してしまうこともありました。
そんな時は、なおちゃんに夫へのイライラした気持ちを聞いてもらい、自分の心をリセットして次の話し合いに臨むようにしました。
ある日、圭子さんは夫にこう問いかけました。
「あなた自身は、これからどうしたいと思っているの?」
最初は圭子さんの言葉をほとんど聞き流していた夫でしたが、圭子さんが
繰り返し話しかける中で、次第に考えざるを得ない状況になっていきました。
「これは本気で考えないといけないのかも…」
夫の中に、そんな気持ちが芽生え始めたのです。
夫はプライドが高く、周囲の目を非常に気にする性格でした。
特に、離婚が親戚や会社の知人たちに知れ渡ることは、絶対に避けたいと
思っていたのです。
そんな夫にとって、「卒婚」は都合の良い選択肢でした。戸籍はそのままで
家の中で別々の生活をするだけ。これなら、自分たちが黙っている限り
他人に知られることはほとんどありません。
圭子さんも、これなら夫の体裁やプライドが傷つくことはないと考えていました。
圭子さんは夫の希望を受け入れながらも、自分が懸念している家の問題や
次女の将来についても話し合いを試みました。
「どう思っている?」と夫の意見をまず尊重した上で
「私はこうしたいと思うのだけど、あなたはどう考える?」
とひとつひとつ夫の考えや意見に寄り添いながら、丁寧に尋ねました。
その結果、夫もようやく心を開き、ついに卒婚に同意してくれたのです。
「いいだろう…」
「ただし、卒婚することは誰にも言うなよ!」
圭子さんの長い道のりが、ここで一つの実を結びました。
つづく